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偏差値80の精神分析の入門書 集中講義・精神分析上: 精神分析とは何か/フロイトの仕事  下 :フロイト以後


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本書は上智大学で行われた精神分析の講義録を書籍化したもので語りおろしのため非常に読みやすいです。上巻ではフロイトの理論について、下巻では著者が精神分析のなかでフロイトを除いて最も重要な人物だとするクライン、ウィニコット、ビオン、ラカンについて解説されています。
 

 

psychoanalysisという英語を和訳したときに「精神分析」とはならないわけで、精神分析はアカデミックな「学」というより、分析家とクライアントとの間でなされる営みの集積としての知であり、寿司を握ることにおいて寿司職人にしかわからない領域があるのと同じだと著者は言います。
 
精神分析という語にはこころを客体化するようなニュアンスがあるが、実際の精神分析は地道で具体的な作業であり、このことを理解する人間が少ないため、本書を読めば日本の知識人のなかでも偏差値80くらいは行くとのことです。(フランスの知識人のなかでは偏差値50くらいらしい)

  

 
 
本書で言及されてる重要そうな文献のメモ
 
 
「ある幻想の未来 The future of an illusion」 
宗教はすべて不安のごまかしであり病気であると断じた論文
 

 
「悲哀とメランコリーMourning ando melancholia」 
喪失が人を成長させるということが書かれた論文
 

 
「ヒステリー研究 Studies on hysteria」
フロイトの最初の本。有名なアンナ・Oのケースが紹介されている。
 

「夢判断 The interpretation of dreams」
「性に関する3つの論文」と並んでフロイト自身特に気に入っていた本。
 

「性に関する3つの論文 Three essays on the theory of sexuality」
著者の藤山さん曰くフロイトの仕事のなかでも非常に重要なものの一つ。
 

精神分析の今後の可能性 The Future Prospects of Psycho-Analytic Therapy」

人間は考える代わりに振る舞う。あるいは反復する。父親に虐げられた人間は自分が父親を憎んでいるということを考える代わりに他の誰かを虐げるか自分が虐げられる環境に身を置く。このように自分の内側のものが外側に出てくることを転移といいます。
人間は繰り返す動物であるというのが精神分析の基本的な考え方であり、この反復から自由になることを促すのが精神分析の仕事です。
 
セラピストが患者に対して転移を起こしてしまうのが逆転移でありこれを克服するために分析家は精神分析を受ける必要があります。
その逆転移というものをはじめて問題にした論文。
 
「心的現象の二原則に関する定式化」
フロイトの論文のなかでトップスリーくらいに重要な論文」
赤ん坊はものを考えられないということについて書いた論文。乳児は概念を操ることができないので、空腹というものをものすごく悪いものがお腹のなかに入ってきたのだと体験する。とても即物的であり無を無として体験できないこのような在り方をフロイトは一次過程のこころと呼び、この概念はビオンやウィニコットにより練り上げられた。
 

「終わりある分析と終わりなき分析」
「自我とエス」「制止、症状、不安」「集団心理学」「快原則の彼岸」とならんで後期の論文のなかで臨床家が絶対に読まなければならない論文の一つ。
精神分析には限界がありその限界はどこにあるのかということが書かれている。しかしこの論文について藤山さんはフロイトは悲観的になりすぎだと書いている
 

 
「素人による分析の問題 The question of lay analysis」
「初学者が精神分析というものを早わかりしたいと思ったときに読むといい」論文
 

 
 
 
クライン
 
「子どもの精神分析
後の概念を使えばきれいに説明できることがむきだしの状態で提示されており難解なため「読むと頭がおかしくなる本」だそうです。
一方「精神分析の本を一冊読むというときには、これは薦められる本です」とも記されています。
 

 
メラニー・クライン入門」
大抵の人がこの本を経由してクラインに触れることになる古典。
 

 
「分裂機制についての覚え書き A note on schizoid mechanism」
クラインによれば、乳児は自分の中の悪いものを自分のなかで処理するは大変なので空想の中でそれを他人に投影している。これが投影だが、悪いものを投影された対象が本当に悪いものになってしまうのが投影同一化。
この投影同一化について書かれた「クライン後期の一番重要な論文」
 

 
 
フロイトーその自我の軌跡」
「優れたフロイト理解の書」
 

 
上下巻の巻末にもブックガイドがあります。

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